はじめに
ADHDかもしれない、という小学校1年生のA君に対する対応、そして周囲との連携についてまとめていきたい。
1.保護者への対応
学校内でのA君の行動について保護者へ報告し、家庭内での状況を聴き取る。保護者に対し、校内委員会で話し合いを行うことに対して同意を得る。また、医療機関への相談に関しても促してみる。
2.校内委員会の設置
特別支援コーディネーターに働きかけ、校内委員会を設置してもらうよう伝える。その際に使用する資料(A君の日常生活の様子、6月までの成績、校内委員会における検討事項及び今後のA君に対する指導方針など)をまとめる。
*担任の視点による報告及び今後の支援内容について
「入学当初より授業中に立ち歩いたりするなど、落ち着きのない素振りを見せていたが、クラス全体的にそのような傾向が見られていたため、その時期は静観をしていた。日が経つにつれてクラス全体が学校生活に慣れてきたのか、全体的に落ち着きを見せ始め、授業中に立ち歩く児童も徐々に減ってきた。しかし、6月に入っても本児だけは入学当初と変わらず授業中じっとしていられない様子が見られている。また、忘れ物も多く、順番も守れないという状態も見られ、今後特別な配慮が必要な児童であろうと思われる。本児がどのような場面で支援が必要になってくるのかを詳細に知るため、特別支援コーディネーターと協力をし、保護者に了解を得た上、校内で行うことができるスクリーニング検査などを実施していきたい。また、本児の保護者に対しても受診を勧めているところであり、主治医との連携もとりながら本児に適切な対応を行っていきたいと考えている。」
3.特別支援コーディネーターと保護者への報告
特別支援コーディネーターと共に保護者を訪問し、校内委員会で話し合った旨を報告した。医療機関への相談に関して聞いてみると、まだ少し躊躇している様子である。スクリーニング検査に関して同意を求めたところ、同意してくれた。家庭版ADHD評価スケールを保護者にお願いし、校内においても同様の検査を実施する旨伝える。
4.校内におけるスクリーニング実施
特別支援コーディネーター・養護教諭とともに、A君のスクリーニング(学校版ADHD評価スケール)を実施する。特別支援コーディネーター・養護教諭には校内委員会終了後、随時クラス内に入ってもらい、A君の様子などを事細かく観察してもらっていたため、より客観的な視点を入れることができた。評価としては、多動性・衝動性、不注意ともに高い値を示した。
5.保護者へのフィードバック
特別支援コーディネーターと訪問し、校内でのスクリーニング結果を保護者へ伝える。家庭版ADHD評価スケールを実施してもらった結果、学校版同様高い値を示したため、保護者があわてて医療機関へ予約を取り、診察に行った模様。医療機関での結果待ちであるとのこと。学校側の対応として、A君に対して特別支援の体制をとっていくことなどを伝えた。今後は医療機関と連携もとってA君の指導に当たっていきたいため、主治医とも話をしたい希望を伝えると、快諾いただいた。主治医と話をするための同意書にもサインをいただけることも了解頂いた。また、希望であれば同席することもできると伝えると保護者は安心した様子であった。
後日、保護者より、ADHDの診断が出たとの連絡があった。特別支援コーディネーターとともに主治医を訪問し、学校内の状況を伝えるとともに、今後の連携協力の依頼を行う。
また、服薬治療も開始したため、服薬に関する注意なども聞くことができた。保護者が予め主治医へ話をしていてくれたため、話をスムーズに行うことができた。
6.A君への対応
特別支援コーディネーター・養護教諭等がA君への対応を行うこととなった。授業中の落ち着きのなさに関しては、動きがあるものにすぐ反応してしまう傾向があることがわかったため、席を窓側の一番前に席替えをした。順番が守れないため、具体的に「○○君の後ろに一緒に並ぼうか」という指示を出すことにより、徐々に理解しているように思えた。忘れ物に関しては、保護者との連絡ノートなどを作るなどして、毎晩・毎朝保護者と一つ一つ確認してもらうことにより、学校への忘れ物は減ってきた。服薬の効果が出ているためか、以前よりも落ち着いた素振りを見せることが多くなってきた。
まとめ
ADHDと決めつけて動くことはできないが、後に正しい判断へつなげて行くためには、アセスメントを実施していくこと、一定のスクリーニングを行うことは非常に重要である。また、早期に学校全体の問題として、校内委員会の設置、特別支援コーディネーターへの支援要請、そして保護者対応と医療機関との連携、全てを早め早めに動いていくことは、一見回り道のように感じるかもしれないが、最終的に対象児童への適切な支援へと繋がっていくこととなる。