22.虐待

虐待と障害についての関係性

キーワード:児童虐待、認知機能、心理検査、発達障害、愛着障害

 虐待の長期化は、子どもの発達を著しく阻害し、脳へのダメージも大きいといわれており、その後遺症として、発達障害に酷似した症状を引き起こすといわれる。虐待の早期発見と適切な介入等、長期的な心理社会的支援などの確立が急がれる一方で、虐待の影響が発達期の脳発達に及ぶ影響をさらに多角的に検討を深め、多様性に富む臨床像に対する支援の方向性を見いだす必要性がある。

背景
 虐待された子どもたちはその不適切な養育環境が発達期の脳に影響を及ぼし、その臨床像は現在第四の発達障害とも報告されている。
→1.外傷性ストレス障害(PTSD)、抑うつ、注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に類似した反応性愛着障害、解離性障害などの心理的・精神的問題
 2.行為障害や非行、自傷行為、触法行為などの行動上の問題
 3.学習行動の問題といった学習上の問題

対象 2007年~2011年に受診した被虐待児21名(身体的虐待10・心理的虐待20・ネグレクト2・性的虐待2)(重複あり)

結果
 発達検査:行動情緒スコアは1症例を除いたすべての症例で正常値を下回っていた
 パーソナリティ検査:10症例に実施。共通する特性として、自尊感情の低下、解離症状、対人交流の苦手さから生じると思われる全般性不安・抑うつ           などが見られた。

今後の支援に向けて
 さまざまな心理特性を持つ被虐待児への支援は、さまざまな分野の専門家を必要とする。児童福祉司・臨床心理士・ケースワーカー・保健師・医師・看護師・保育士・教育者・児童指導員・スクールカウンセラーなどの専門職などが関与し、多職種で子どもと家族を支援できるような体制が必要である。そのためには関連する分野の専門機関と、医療機関との連携を円滑にし、長期的な支援の構築が急務であり、専門家の児童相談所や児童養護施設などへの十分な配置についても検討しなければならない。

参考文献:黒崎碧他(2013)「被虐待児における認知、行動、情緒機能の特徴における検討」「順天堂医事雑誌2013.59」P.490~495